Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.8(2022年)→1.9(2023年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2023 - Vol.50

Vol.50 No.01

Editorial(エディトリアル)

(0001 - 0002)

脾腫をいかに評価するか

Assessment for splenomegaly

廣岡 昌史

Masashi HIROOKA

編集委員,愛媛大学大学院 消化器・内分泌・代謝内科学

Associate Editor, Department of Gastroenterology and Metabology, Ehime University Graduate School of Medicine

キーワード :

 先日門脈圧亢進症取扱い規約第4版(日本門脈圧亢進症学会編)が出版された.門脈圧亢進症の病態を診断していく上で超音波は重要な役割を果たしている.今回改定された取扱い規約の中でも超音波について,いくつかの記述が見られる.この中で超音波検査による脾臓の計測についても改定がなされていた.これまでの古賀の式,千葉大学第一内科の式による容積推測に加え,腹部超音波検診判定マニュアル改訂版に記載されている計測方法が追加された.この脾臓の超音波計測評価方法については本学会の英文誌,Journal of Medical Ultrasonicsにおいても日高先生らが取り上げている1).脾臓の超音波計測は腹部超音波検査の際には必ず行われる極めてニーズの高いものである.実際の臨床の場においてどの計測方法を使用するかはそれぞれの検査施行医,検査技師により決定されているものと思われる.以前筆者らはそれぞれの方法を比較したので2),私見を交えて紹介したい. 1.脾臓の形状は相似形なのか  脾臓の形状はコーヒー豆やソラマメ状としばしば形容される.肝臓に比べ形状にバリエーションが少ないため,数ポイントを計測することにより脾臓の容積を推測しやすいものと思われる.一方でどのポイントを測定すれば良いかという視点で考えると,被験者間で脾臓の形状が大きく変わらないことが重要となる.例えば脾臓を長軸方向(ルーチン検査で脾臓を描出する断面方向)の最大断面で見た場合の底辺と高さの比率,あるいはこの最大断面と直行する方向における奥行きの長さとの比率に個体間のバリエーションがある場合,測定ポイントを固定すると正確な容積推測ができなくなる可能性がある.また長軸方向の底辺と高さは個体間で大きな差がなく,奥行きの長さにのみばらつきが大きい場合は3ポイントの測定を行わなければ正確な脾臓の容積は反映できないことが想定される.以前筆者らが検討すると底辺,高さ,奥行きは正の相関はあるものの極めて強いものではなかった(非公表データ).そのため3ポイントを測定することにより脾臓容積をより正確に反映することができるのではないかと期待した. 2.各脾臓測定方法と脾臓容積の相関  筆者らの検討では脾容積との相関は1ポイント(r=0.84),2ポイント(r=0.87),3ポイント(r=0.91)で,いずれも高い相関となった.散布図を見ると3ポイントでの計測がより良好に相関しているように見える.より正確性を求めるのであれば計測ポイントが多い方が全体の容積を反映するが,問題となるほどの差異はないように思われた2). 3.臨床的な意義について  脾腫は門脈圧亢進症に影響されるため,食道静脈瘤や腹水などの診断予測に活用できる.腹部超音波検診判定マニュアル改訂版で推奨されている1ポイント法でいわゆるhigh-risk静脈瘤の診断能を見た場合,感度90%以上のカットオフは9.2 cmとなり,概ね10 cm以上を脾臓腫大と判定する基準を支持していると考えられた.AUCはそれぞれ1ポイント(0.768),2ポイント(0.796),3ポイント(0.804)であり軒並み高い数値となった2). 4.まとめ  より容積測定や臨床的アウトカムの正確性を求めるのであれば複数ポイントでの計測を行うべきではないかと考えられた.しかしその成績は若干劣るものの1ポイントでの計測はスクリーニングの段階における需要を十分に満たすレベルであり,検診や臨床での検査には1ポイントでの計測で十分ではないかと思われる.測定ポイントを増やすことによりC Tにより脾容積や臨床的なアウトカムの予測成績が向上することも間違いないため時間的な余裕がある場合は2ポイント以上の測定を行うことが良いのではないかと思われる.  最後に本学会の和文誌には古賀先生らの脾臓容積に関連した論文が多数掲載されている.1969年の論文が最初のものと思われるが3),確認できるもので第25報まで掲載されておりぜひ一度ご覧いただきたい.古賀先生らの脾臓に対する姿勢にただ敬服するばかりである. 文  献